日常的に誰にでもおこる疲労。休息や睡眠、入浴などによって、その日の疲れはその日のうちに取るのが理想です。ところが、いくら休んでも疲れが取れない、それどころか体調もイマイチ・・・という方は、内臓が疲れている可能性があります。
疲労とは、過度の身体的または精神的活動、あるいは疾病により、体や心が本来の力を発揮できなくなる状態をいいます。
激しい運動や重労働などで起こる肉体疲労(筋肉疲労)は、十分な休息を取ることで回復します。ところが、ストレス社会に生きる私たちが抱える疲労や原因不明の体調不良の多くは、脳や自律神経、内臓への負荷に起因しており、解消は容易ではありません。そして、無自覚のうちに疲れがどんどん蓄積され、気づいたときには心身が辛い状況に追い込まれていることもあるのです。
脳や内臓が疲れる要因は様々で、しかも複数の要因が絡んでいることも少なくありません。
人間関係・社会生活・環境の変化に対するストレス、不安感、緊張、悲しみなど。
睡眠不足、栄養不良、不規則な生活、喫煙、過度のアルコールやカフェイン摂取など。
紫外線、季節の変わり目(気温の寒暖差や気圧変動など)、不快な湿度、騒音など。
ウイルスや細菌、大気汚染、化学物質(医薬品等を含む)、有害金属、食品添加物、食品中の残留農薬など。
貧血、更年期障害、不眠症などの睡眠障害、慢性的な痛み、風邪やインフルエンザなどの感染症、アジソン病(原発性の副腎機能不全)、慢性疲労症候群、甲状腺機能低下、自己免疫疾患、摂食障害、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肝疾患、腎臓病、ガン、糖尿病など。
うつ病、不安神経症、季節性情動障害など。
ストレスを察知した脳は、防御反応として、視床下部から2つのルートを通じてストレスに対抗するための準備状態を作り出します。ひとつは体の働きを調整する「自律神経系」、もうひとつはコルチゾールというホルモンの分泌を促す「視床下部―下垂体―副腎系(HPA軸)」です。
自律神経は、心身を活動させるための「交感神経」と心身を休息させるための「副交感神経」という2つの相対する神経で成り立っています。この2つがシーソーのように交互に働き、内臓のはたらきや代謝・体温などを調整しています。
ストレスを感じると、視床下部から交感神経を活発化させる信号が発信されます。交感神経が優位になると、血圧・心拍数の上昇や筋肉の緊張が起こり、心身は活動モードに入ります。ストレスを受け続けると交感神経の優位が続き、副交感神経と上手く入れ替わることができません。全身が緊張したままでは疲れが取れないのも当然。加えて、心身の不調を引き起こしやすくなります。
脳はストレスを感じると、視床下部―下垂体―副腎系(HPA軸)を介して副腎皮質からコルチゾールを分泌させます。コルチゾールは血圧や血糖値を上げて体の活動性が高めたり、体内の炎症を抑える働きがあります。
前述の通り、精神的ストレス、過労、睡眠不足、栄養不良、不規則な生活、大気汚染や食品添加物、アレルギー・持病・感染症などによる体内の炎症など、私たちは多くのストレスに晒されています。ストレスが加わる度に、そして体内に炎症が起こる度に、副腎が必死にコルチゾールを分泌します。しかし、コルチゾールが過剰に分泌される状態が続くと、やがて副腎は疲弊してしまいます。
副腎が疲弊すると、必要な時に十分な量のコルチゾールを分泌できず、ストレスに対抗することが困難になります。血糖値を上げてエネルギーを生み出せなければ、疲れやすくなるのも無理はありません。また、炎症が抑制できないため、病気が治りにくくなります。さらに、副腎疲労は副腎の機能低下やコルチゾール以外のホルモンの産生低下にもつながります。
お役立ち情報の【副腎疲労症候群〜副腎疲労の原因から治療・予防まで解説!】でご紹介している副腎疲労を予防するための栄養や生活習慣は、心身の疲労改善にも有用です。ご参考になれば幸いです。
参考資料 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4525425/, https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5050399/, https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3860380/